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みやぎ就農ナビ

イチゴづくりに携わる人を増やし、
地元と一緒に発展していく
(第1回)

  • 農業生産法人 株式会社GRA
  • 代表取締役CEO 岩佐 大輝 さん
大手百貨店で売られている1粒1000円の「ミガキイチゴ」をご存知でしょうか。この「ミガキイチゴ」を生み出したのが、宮城県の農業生産法人GRAです。同社ではイチゴの生産だけでなく、新規就農支援事業を行い、農業の担い手育成に力を入れています。GRAの岩佐大輝さんにインタビューしました。

 

イチゴを日本一、世界一の産業に育て、地元を復興させる

 

岩佐社長がイチゴの事業をスタートしたきっかけを教えてください。
もともと私は東京でIT関係の会社を経営していました。2011年3月に東日本大震災があり、自分の故郷である宮城県山元町も被害を受けました。山元町の主な産業はイチゴで、当時129軒のイチゴ農家があったのですが、そのうち122軒が壊滅しました。私は山元町にボランティアに来た時にこの状況を知り、イチゴ作りを通じて地元の復興に挑戦しようと考えたのです。

もともと人口が減り続けていた町なので、以前の状態に戻すことだけではあまり意味がない。そこで、ただイチゴを作るのではなくて山元町のイチゴを日本一や世界一の強い産業に育てて、雇用を創出しようと考えました。そして2011年7月にGRAを創業し、イチゴ作りをスタートしました。

(GRA設立のきっかけなどは、岩佐さんの著書『99%の絶望の中に「1パーセントのチャンス」は実る』に詳しく書かれています)

情報収集や人脈づくりが農業には必須

創業後はどのように事業を進めていったのでしょうか。
ツテもなく農業に関する知識もない素人でしたから、まずは山元町のイチゴ農家の人に話を聞くことから始めました。分からない時は「分かる人に聞きまくる」ことが大切です。話を伺った方はみなさん親切に、細かいところまで教えてくださいました。また、市販されているイチゴ作りに関する本や、最新の施設園芸関係の本をほぼ全て読みました。

そんななか、イチゴ作り40年のベテランであり、現在当社の最高栽培顧問を務めている橋元忠嗣と出会いました。彼の経験、技、人脈、そして情熱を借り、ボランティアの協力も得ながら、イチゴ作りを始めることにしました。

ただ、橋元さんは職人気質の人であり、「一人前のイチゴ農家になるには15年かかる」と言う人です。しかし私は15年も待っていられません。そこで、橋本さんのやっていることと、ITを掛け合わせることで再現性の高い農業ができるのではないかと考えました。そして自分たちが出資したお金と銀行から借り入れた資金を合わせてハウスを建設し、2012年からITを駆使したイチゴ作りをスタートしたわけです。

 

事業を進めるうえで苦労したことは何ですか。

 

農業というのは、土地や水、人といった資源を借りて行う事業です。IT企業のように、東京が嫌になったからどこか地方に移転する、ということができません。つまり、農業をやるということは地域に根ざし、地域と共に育つということなのです。ですから新規参入する場合には、その土地に地縁や血縁が全くないと、事業を始めるのに苦労することになります。

ではどうすればいいかと言うと、その地域の先行者を頼ったり、レジェンドのような先輩を見つけて相談したりといったことが必要です。私の場合は、山元町出身というアドバンテージはありましたが、農業に関して全くの素人でした。イチゴ農家をたくさん周ってお話を聞いたり、役所や農協にも毎日のように通って相談に乗ってもらったりしました。そういったネットワーク作り、情報収集が大変といえば大変だったかもしれません。

 

新規就農に失敗しないための「6つのステップ」

 

最近の著書『絶対にギブアップしたくない人のための成功する農業』(朝日新聞出版)で解説している、農業を始めるまでのステップについて簡単にご紹介ください。
以下が6つのステップとなります。
 
  • ステップ1:農業をやる目的を言葉にする
  • ステップ2:自分が望む生活スタイル(収入、時間の使い方)を決める
  • ステップ3:作物・作型(育て方、こだわり)を考える
  • ステップ4:10年間の経営のビジネスプランを数字に落とし込む
  • ステップ5:資金調達の方法
  • ステップ6:情報収集とネットワーク

特に1から3のステップが重要です。この3つがある程度決まったら、その後考えるべきことは自ずと決まってきます。それぞれの中身は以下の通りです。
 
  • ステップ1:農業をやる目的を言葉にする
    そもそもなぜ農業をやりたいのか、ミッションを言語化しておきます。私の場合は、「地元を復興させるために、雇用を作り、人を呼び込むこと」を目的にしました。これから農業に取り組みたいという方は、ぜひ目的を掘り下げて考えてみてください。
     
  • ステップ2:自分が望む生活スタイル(収入、時間の使い方)を決める
    次に、自分がどういうライフスタイルを送りたいのか決めます。具体的には、どのくらいの年収を目標にするのか、どのくらいの労働強度(大変さ)か、どの季節を中心に働くのか、そういったことを定めていきます。
     
  • ステップ3:作物・作型(育て方、こだわり)を考える
    農業をやる目的や、自分の好きな食べ物、理想のライフスタイルなどから考えて、それに合った作物・作型を決めていきます。また、マーケットの動向や競合他社の動き、人口動態といった外部環境を把握し、中長期的に持続可能で優位性のある作物を選ぶことも大切です。
     
  • ステップ4:10年間の経営のビジネスプランを数字に落とし込む
    農業では、設備投資した資金を投資回収するのに10年前後かかります。したがってビジネスプランを10年分作成する必要があります。
     
  • ステップ5:資金調達の方法
    自己資金以外で資金調達する方法には、補助金、銀行借入、株式発行の三つがあります。農業にはさまざまな補助金があるので、事前によく情報収集し、使える補助金は全部使うようにしましょう。
     
  • ステップ6:情報収集とネットワーク
    農業経営をするにあたっては、情報収集が欠かせません。農業関係のメディアには常に目を配りましょう。また、何かしらの団体に所属したり、地域の勉強会に参加したりしてネットワークを作りましょう。

各ステップの具体的な内容については本を読んでいただければと思います。農業も経営ですから、やってみなければわからない部分はあります。企業の生存率は10年間で5%と言われますが、農業もおそらくそれくらいの確率でしょう。農業を始めて10年以上生き残っていくためには、通常の企業経営のようにシビアに考えることが大切だと思います。
 

 

 

 

企業経営としての農業を支援

 

現在はイチゴ作りの他に新規就農支援も行っていますね。新規就農支援事業についてご説明ください。
我々のミッションは10年間で1万人の雇用を創出することです。といっても当社だけで1万人の社員を雇うことはできません。しかし、我々が育てた人が独立をして事業を拡大すれば、イチゴを作る人はもちろん、売る人、加工する人などさまざまな雇用が生まれます。そのために新規就農者の独立を支援する事業をスタートさせました。

当社の新規就農支援事業は、最短1年で独立できるノウハウを提供しているのが強みです。最先端技術を活用し、栽培方法の習得からハウス建設、イチゴの全量買い取りまで、一気通貫でサポートしています。しかも根性論でやる農業ではなく、きっちりとロジックで計画を立てて、企業経営としての農業をスタートし軌道に乗せてもらうことを目指しています。これからも1年で必ず独立するというスピードにこだわっていきたい。

新規就農の問題は初期投資が高すぎることですが、初期投資を抑えるために旧来型の設備を作っていては労働強度が高くなりすぎ、働き手が集まりません。初期投資を抑えつつ、最新の、労働強度が低い設備を導入することがスタート時から重要になります。そういったノウハウを当社が提供することで、新規就農者はできるだけ金銭的なリスクをとらずに、農業をスタートできるという仕組みになっています。
新規就農者に求める人物像などはありますか
人とコミュニケーションが取れる人、挑戦することを恐れない人ですね。経営なので個性があるのはいいことですが、周りの人との協調性も大切です。自分の利益だけを追い求めていては失敗します。自分のデータや技術を囲い込むのではなく、周りの人と積極的に共有することで、一緒に成長していくことが可能となります。

 

農業には他の事業にはない充実感がある

 

儲かる農業経営者になりたいと思っている人へアドバイスをお願いします。
経営ですから、リスクを取らないとリターンは得られません。リスクを取るということは、経営者としての覚悟を持つということです。地域とともに育っていくという覚悟を持ち、勉強熱心な方であれば、きっとうまくいくと思います。

農作物は作ったら必ず売れます。工業製品だったら、規格が合わなかったりすると売れずに在庫の山になりますが、農業では市場というセーフティネットがあるので必ず買い取ってもらえるのです。その代わり利幅が薄いこともある。だったらどうすればいいか。価格が下がらない作物を作る、市場を通さないで販売するなどいろいろな方法が考えられます。工夫のしがいがあるところが農業のいいところです。また、国や自治体のサポートも充実しています。起業を考える人は、農業を一つの選択肢としてとらえてみるのも面白いのではないでしょうか。
新規就農支援事業についての目標を教えてください
我々が支援した新規就農者の方の所得をどれだけ上げられるかが、これからの挑戦です。そのためにどういうノウハウを提供できるのか、試行錯誤しながら淡々と施策を実行していくのが今後の目標です。農業というのは衣食住という人間の根幹に関わる仕事です。自分の作った作物を誰かが食べて、喜んでくれる。この充実感は、他の産業にはなかなかありません。ぜひ多くの方に農業にチャレンジしてほしいですね。

(第2回に続く)
(写真/文:みやぎ就農ナビ編集チーム)

 

 

 

 

プロフィール
  • 岩佐 大輝(いわさひろき)さん
  • 農業生産法人 株式会社GRA
  • 代表取締役CEO
  • ホームページ:http://gra-inc.jp/
  • 1977年宮城県亘理郡山元町生まれ。24歳でITベンチャーを起業。東日本大震災後に先端施設園芸を軸にした地域活性化を目的とするGRAを創設。趣味はサーフィン。著書に『99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る』(ダイヤモンド社)、『絶対にギブアップしたくない人のための成功する農業』(朝日新聞出版)など。